音楽を語ろう
by Ganmen1281
20歳になった時、ふと、20年間聞いてきた『音楽』の総まとめをしようと振り返るタイミングがあった。その時作ったプレイリストがこれだ。
多分、物心つく前に両親の車の中で聞いていた音楽もあるだろうが、記憶にないものは割愛している(ラブサイケデリコとか、ビートルズとか、そういう音楽を大量に聞かされていたとは聞いている)。
時系列順では全くないのだけれど、このリストに入っている音楽は、僕の20年の中でも強い影響を残している。その中のすべてを語ろうというのではないけれど、なんかこう、語りたくて仕方がないものをここでは語ろうと思う。
『チルドレンレコード』は、忘れもしない。小学校五年の夏休み、マリオカートのゆっくり実況にハマっていた時期に突然出会った。
そのマリオカートを実況していたチャンネルは全く記憶にないが、なぜかこの曲をその動画のOPにしていて、聞いた瞬間鳥肌が立った。好きすぎた。動画のOPの部分だけを繰り返し聞いた。調べるとMVが出てきて、そのMVに登場する意味ありげなキャラクター達に惚れた。最高にカッコよかった。すぐに小説を買って、すぐに漫画を買った。直後アニメもレンタルして、所謂カゲプロ廚になってしまったわけだ。僕は未だにカゲロウプロジェクトを愛していて、そんな人間は数を減らしてしまったが、僕は未だに彼らの物語を何度も読み返す。
『ゲラゲラと笑うな』、これもほぼ同時期に聞いていた音楽で、たしか小説版カゲロウデイズの巻末コメントに石風呂さんが寄稿していたとかで、この人はいったい何者なんだと検索をかけて、一番最初に引っかかったのがこの曲だったような記憶がある。
出会い自体は10年前だけれど、石風呂さんに本格的に影響を受けたのは5,6年前の話だ。『ティーンエイジ・ネクラポップ』とか、『サンデーミナミパーク』とか、そういう音楽をある時期はずっと聞きあさっていた。ネクラを自称していた時代。社会からあぶれて、みんなが高校に通学する中、一人河川敷を散歩していたあの時、僕は石風呂さんの音楽と共に暮らした。まあ、聞いてみるとわかるかもしれないけれど、そういう僕みたいな人間をちょうどよく肯定してくれたのだ。
『Ride on shooting star』は、皆さんお分かりの通り、アニメ『フリクリ』の主題歌だ。フリクリは僕の人生を決定づけたと言っても過言ではない。とっちらかった印象の強いシナリオ、技術力の化身ともいえる作画、素人特有の間延びした演技、そのすべてが思春期の僕に強く刺さった。1話ごと、入口と出口で大きく主人公が変わっていくのだけれど、その変化がなんとなく成長期の僕と重なって見えたし、アニメの動機に深い理由を求めない僕は、考察とか、そういう要素に嫌気がさしていて、勿論フリクリは緻密に設定が練られたうえであのおかしさを演出している訳だけれど、その『裏』をうまく隠しきったまま、知る必要もないんだ、ただ受け取れという感覚が、あのころの僕にとても刺さった。
the pillowsはこの前解散してしまった。ショックだった。
『学級崩壊』は相対性理論の中で一番好きだ。なぜだか全くわからない。僕が相対性理論で一番最初に聞いたのは『ミス・パラレルワールド』。結構ハマって、シンクロニシティーンのアルバムを通しでは聞かなかったけど、齧って聞いて『小学館』とかを聞いた。で、声に聞き覚えがあったので調べると、アニメ『ハイスコアガール』の主題歌を歌ってたり、坂本龍一の『バレエ・メカニック』をカバーしていたり(これは僕が大好きなアニメ映画『エウレカ・ハイエボリューション2・アネモネ』の主題歌だった)、結構僕の好みとかぶる部分は多かったのに、結局聞くのをやめてしまった。
友達が何度も何度も進めてくるので、そのたびに「好きな女の子が聞いてると惚れるバンドだよね」とテキトーこいて誤魔化して聞かなかったのだけれど、本当になんとなくで適当に再生して、流れてきたのがこの曲だった。その時僕は自転車を漕いでちょっと遠出していた。そしたら涙が止まらなくなって、途中で自転車を止めて、手で涙をぬぐって、ちょっとベトついたので自転車のハンドルで手を拭いた(最悪)。
結局これ以外の曲は「いいなあ~」と思うに留まっているが、とにかく、この曲だけはいつでも涙が出そうになる。
『イガク』は、たぶん20年で最も長い期間聞き続けている曲だと思う。
始めて聞いたのは、Youtubeの二次創作ビデオだったはず。重音テトの顔が、イガクのリズムに合わせてどんどん変わっていくという縦形動画で、7回ぐらい再生した後、脳みそからその音楽がこびりついて離れなくなった。テイ・トーワみたいで、音MADみたいな不思議な音。歌詞の意味とか、そういうものが、きちんと理解できるわけではないけれど、なんとなくの感覚が、作者とリスナーに共有される。音楽のカタチの一つだと思って感動した。僕はとにかく後ろで流れている音楽が気になって、曲名とアーティストを知る。ボーカロイドにハマったのが何年かぶりで、アーティスト名の後ろに『P』がついていないのが気になって、wikiでそのアーティスト、原口沙輔について調べてみたら、21歳。
僕は20歳の誕生日を迎えた直後にこの曲と出会っていて、それまで20歳というのはモラトリアムの延長線上にあるものだとばっかり思っていたので、21歳にも関わらず前線で戦っているこの男は何者かと、戦慄した。なんとなく「若いのにこんなにできて凄いねー」とメディアなりで持ち上げられている人間に対して、僕は若干穿った見方をしてしまう悪癖があって(多分自分がそういう風に持ち上げられた経験があるからだろう)、大体心の底から「良いな」と思える事がなかったのだけれど、バックボーンを何も知らずに再生して、それが心に『いいな』と記憶を残した音楽を作り出した人間が、その若さを武器に戦っていて、僕は自分の考えを改めることになった。
『幸福な朝食 退屈な夕食』を聞いたら、このプレイリストは終わる。
今歩いているこの道が、いつか懐かしくなるんだろう…。そういう感情を常に抱きながら、日常に戻っていく。この先どうなるかなんて、だれにもわからない。とにかく、懸命にもがくなかで、僕は音楽と出会うし、アニメにも出会うし、映画にも出会う。流動的にただ繰り返されるこの世界を、ただ、生きていくだけ…。
僕が出会った曲の中で、一番素敵だと思う。
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